ロードバイクでチャリチャリやってます

人生マイペース、自転車もマイペース

効率の良いペダリングについての考察

ここに現状のペダリング至った理論を置いておく。

 

自転車のペダリングとは単純にペダルを踏みこんでいるようで様々な要素が絡み合って成立している動作と考えている。

 

端的に言えば推進力を得るためには往復スライダクランク機構を利用しペダルに対し下方向に力を加える事になる。当たり前だが強く力を加えると速く進む事が出来る。ただ、あくまで人力で進むものなのでその場面に応じて適切な強さで力を加えないと疲労により出力を維持出来なくなるのが難点である。絶対的パワーと持久力に依存する部分が大きい為、力強い推進力を得るにはトレーニングによる身体能力向上の効果が高いと考える。

 

だが効率のよい動作を行う事により精度を向上させる事は可能だ。無駄な動きを排除する事で楽に速く進む事も出来るようになる。私の考える効率のよい各部の動きを順を追って説明していきたい。

 

ペダリングは脚力に目が行きがちではあるが、実は上半身の固定力も重要な要素となる。上半身をしっかりと固定しブレを最小限に抑える事により脚力を最大限活用できる。要は土台のようなものだ。自転車に対し意識的に固定している部分は手であり腕であり上半身になる。ペダルも固定していると思われるかもしれないが、ペダルには足をのせていると考えた方が自然だと思う。この時、筋肉は関節の動きを伴わない等尺性筋収縮という動きをしている。要は体勢を維持する動作だ。単純にこの力が強ければ強いほど上半身の固定力は増し、ブレない体幹を得る事が出来る。プランクレーニングの動作がこれに近似している為サイクリストにとっても有効なトレーニングである事は言うまでもない。

 

巷でやたらと低いハンドルが賞賛される風潮があるが、弱い体幹で深い前傾姿勢は上半身のブレを促進するので筋力に合った高さに調整するべきものである。ブラケットに自然に手を置いて丹田の部分に負荷を感じず、腕ではなく胸の筋肉がしっかり使える程度の高さが理想であろうと思う。置いてある時の自転車の見た目はいいかもしれないが、乗っている本人がハンドルに寄りかかっているようでは全く見た目もよくない。

 

次にペダルに対する入力の話をしたい。私のベースになっているのは若き頃に汗を流した空手である。空手の動作も奥が深い。突き、蹴り、肘打ち、膝蹴り、受け全てに共通しているのはインパクトの意識である。インパクトとは瞬間全身の筋肉を硬直させる事により得られる大きな力だ。力は加える時間が長ければ長いほど小さくなり効率も悪くなる。内燃機関もピストンを押す力は一瞬である。狭い部分に混合気を圧縮する事で爆発力の効率を上げ最大の爆発力から最大のトルクを得るのである。

 

なのでペダルに対する入力は一瞬である方が良い。ペダリング動作の場合、クランクの3時付近でトルク効率が最大になると言われているので足が上死点を超えた辺りから2時付近で脚の重みを加え下方向にインパクトを与える意識をしている。何故3時付近じゃないのかと思われるかもしれないが、筋肉も所詮脳からの電気信号で動いており「ここ!!」と言う時は既にスイートスポットを超えてしまっている気がする。それ以降は力み=ロスになるので少し早めに動作を始めその分早めに動作を終えるようにしている。

 

実はこの瞬間は関節も固定されている。宮澤崇史氏の「理論でカラダを速くするプロのロードバイクレーニング」という本の中に「骨で踏む」という項目があるがこれに近い。インパクトの瞬間に関節が固定されていないと力が逃げてしまいストレートに伝わらなくなってしまう。ただ、関節を固定出来るのは本当に瞬間で動作の起点一瞬である事を忘れてはいけない。それ以降は単に動作に対する抵抗となる。グラップラー刃牙というコミックの中で著者の板垣氏が剛体術と名付けて説明している内容がほぼそれだ。なので上述のインパクト理論になるのだ。

 

このペダルを踏むという行為には股関節を稼働させる事が重要だ。流行りに乗ってこのような事を書いているのではなく既に昨年9月には当ブログで軽く書かせて頂いている。

whitecollarcyclist.hatenablog.jp

股関節を使うという事を漠然と言われても良く分からないと思う。これは私のイメージだが、腕も脚も胴体にくっ付いている物である。そして胴体に一番近い部分の筋肉が一番大きく力がある。脚の指先で物を挟むのと内腿の上で挟むのとどちらの方が力が入るだろうか。殆どの人は後者であろう。そして一番脳の信号が送りやすい場所にありブレが少ないのである。股関節を適度に稼働させその近くの筋肉で一気に押し込む事により効率的に大きな力が発生する。稼働域自体は然程大きくなく再現性も高いのでペダリングのブレが小さくなる。この動作の中で連動している背面の筋肉、主に殿筋(尻の筋肉)とハムストリングが使えるようになり、太腿以下の関節に一体感が出る為膝のブレが減少し負担が軽減されるのである。

 

また、ペダルは真っ直ぐに入力した方が効率が良い。具体的な意識としては大腿骨の付け根、膝関節、足首の関節、ペダルが一直線上に並ぶのが理想的。この場合、ペダルの位置から考えると膝はやや内股気味になるのが正解であると思われる。これは二次的効果として体幹を締める形になり脚に力が込めやすくなる。

 

足首は踵側についている事から固定が緩いと踵が先に落ちるアンクリングが発生する。多少のアンクリングは許容範囲と考えるが大きくアンクリングすると力が直接ペダルに伝わらない為ロスが大きい。個人的には母指球で踏むよりも足全体でペダルを踏む意識の方が足首が上手くロックされブレが少なかった。この辺りは個人差が大きいと思うので自身で試す必要があると考える。足首のロックも一瞬であるのを忘れてはいけない。

 

続いて引き足である。引き足はペダルを引き上げるものでは無く太腿を引き上げる動作である。なのでビンディングペダル引き足が使えるというのは嘘である。ビンディングペダルは高ケイデンス時にペダルから足が離れないようにするための仕掛けだ。前出の宮澤崇史氏の「理論でカラダを速くするプロのロードバイクレーニング」に書いてある通りこれが実に厄介で一連のペダリング動作の中で唯一重力に逆らう動きである。重力がかかるクランクの6時以降のベクトルは基本マイナスに働くのは想像すれば明らかだと思う。これに使用する筋肉は宮澤氏が書かれた通り腸腰筋だ。太腿の筋肉をふんだんに使って太腿自体を上げる動作よりも圧倒的に効率が良い。なぜならこの筋肉は下腹部の両サイドに位置し脚より高い位置にある為、重い太腿をそれこそ引き上げる事が出来るからだ。

 

また意識の仕方によりペダルを踏みこむ前段のタメを作る事が出来る。ゴルフで言うトップの意識だ。膝頭が一番高い位置に来る瞬間手前を意識しそこで一瞬力の流れを抜く。今度は脚の重みを利用しつつペダルを踏み込む動きに移行する。このタメを作る事により動作にメリハリが生まれ精度もパワーも格段に上がる。

 

一言で言えば腸腰筋で太腿を引き上げ一瞬のタメから股関節で踏むイメージになる。

 

またこの腸腰筋を効果的に使う為にはサドルにやや後ろ気味に乗る方が良いと言われている。前乗りの場合は大腿四頭筋というハイパワーだが疲れやすい大きい筋肉を使う事になる。日々トレーニングに勤しむ強いライダーならいいが週末ライダーには厳しい。そして関節への負担も大きく無理して前乗りを続けると膝を痛める確率が上がるとも言われている。UCIが選手を守る為に「サドル位置はBBより5cm以上後ろ」と規定をした事も知られた事実だ。各社がショートサドルなるものを挙って販売し結局前乗りの流れは止まらなかったように感じる。しかし、素人が簡単に真似するものでは無い事をお伝えしておきたいと思う。ひょっとしたらサイクリスト人生を短くしてしまうかもしれないのだ。

 

最後に脚を体全体で動かす意識を持つ事が重要になる。脚だけではなくその周辺の筋肉も総動員して右ペダリングの場合、右半身全部で背中側から背筋を使ってハンマーで打ち下ろすようにペダルを踏む意識が良い。言うまでもなく左も同様となる。体幹なんて言われてもどう使うか分からないと思うので是非背筋を使ってみてもらいたい。脚だけのペダリングよりはかなり楽に力を発揮できる筈だ。ここに詳しくは書かないが先ほどのインパクト理論も含め私は井桁術理という古武術の動きを流用している。

 

つらつらと長文で書いてきたがこれまでの経験の中で考えた結果辿り着いたペダリングについて書かせて頂いた。私的にはペダリングの動作は階段を上るイメージに近いと考えている。階段を上る時にペダリングの意識をしてみてもらいたい。クランクの7時や8時まで力を加えてるイメージを再現したら体が浮き上がる筈だ。一瞬階段を蹴って上る方が疲れも少なく速い事を容易に体感できると思う。

 

速く走りたいなら愚直に筋トレを重ねフィジカルを上げた上で、サドルに前乗りして上体を倒して頑張って大腿四頭筋で力強く踏めばいい。体の前面の大きい筋肉が使えるし、実際私も瞬間的にパワーが欲しい時はそれをやる。だが、ロードバイクは距離を踏める道具だ。その乗り方で数時間乗り続ける事が出来るか考えてもらいたい。私のように巷にいくらでもいるようなサイクリストですらペダリングという単純動作を何時間もサドルの上で繰り返すのだから精度を向上させて筋肉や関節への負担を減らし怪我をしない乗り方を考えた方が長く楽しめると思う。大きい力はそれなりにロスとリスクを伴うのも理解しておいてもらいたい。

 

単純にパワーが上がった事で喜んではいけない。1時間2時間と同じことを続ける事ができるか冷静に判断してもらいたいと思う。

 

これは私流のペダリング理論である。結果として私は怪我とは無縁なサイクリスト生活を8年以上続けてきている。なので反論やご意見は募集しない。間違っていると思うのなら参考になさらぬようにお願いしたい。この辺りの答え合わせは是非皆さんで行って頂きたい。